行くぜ、東北。JOURNAL
No.005 2019.11.13
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今も昔も愛される、ほほ笑みの福の神「仙台四郎」

仙台の街を歩くと、あちこちで目にする、着物姿でほほ笑む男性の写真。彼の正体は? そしてなぜ地域に根付いているのか? その謎を探ってみた。

気がつけばここにも。福の神で知られるにっこり笑顔の仙台四郎
老舗うなぎ店『開盛庵』に飾られている仙台四郎
牛タン店に和食店、路地裏の小さな居酒屋やインドカレーの店にまで。仙台のいろいろな店で目にするのが、腕を組んでにっこりほほ笑む着物姿の男性の写真。写真だけでなく、ときには店の一角やレジの横に、こちらの男性の人形がちょこんと座っていることもある。
ずんだ餅でおなじみ『村上屋餅店』に飾られている仙台四郎
実は、この男性こそが、昔から「仙台の福の神」と崇められている「仙台四郎」。
特に商売繁盛の神様として、仙台市民に広く知られる存在だ。

昨今では、福を呼ぶキャラクターとして、商売人だけでなく世代を超えて親しまれている。
その数奇な人生を知るために、商店街の中にある不動院へ
クリスロード商店街のビルとビルの間に建つ『三瀧山不動院』。本堂がある奥は通りの喧騒が嘘のような静けさ
仙台市の中心部。多くの店と人でにぎわうクリスロード商店街にある『三瀧山不動院』は、仙台四郎を祀っているただ一つの寺院だ。通りから入った奥に本堂があり、地元の人はもちろん、県外や海外の観光客も参拝に訪れる。

果たして仙台四郎とはどんな人物なのか。『三瀧山不動院』の加藤隆俊副住職に話を伺った。
加藤副住職によると、仙台四郎は、明治時代に生きた実在の人物だという。本名は芳賀四郎。仙台市内の鉄砲屋職人の四男として生まれた。※四郎ではなく豊孝という説もある。
幼少時、花火を見に行った際に誤って川に落ち、生死の境をさまよったことで、知的障害を患ったといわれている。

そんな彼を「四郎馬鹿」と呼ぶ者もいたというが、いつもニコニコと愛嬌があり純粋だった四郎は、小さい頃から街の人気者。近所の店先で掃除を手伝って感謝されたかと思えば、店の人に招かれてごちそうになるなど、気ままに街を歩き回るのがいつもの日課で、四郎が訪れる店はなぜか客でにぎわい商売繁盛。その噂が広まって「福の神」と呼ばれるようになり、「知事や市長を知らなくても四郎を知らない人はいない」と言われるほど有名になったという。

あちこちの店に行きタダでごちそうになったともされているが、四郎の家は裕福だったため、両親がきちんと支払いに行っていたという話も。結果、店の売上も潤ったのかもしれない。

ちなみに、子どものように純真な心の持ち主だった四郎には、店の人が本当に自分を歓迎してくれているかどうかを見分ける力があったといい、下心のある店にはどんなに誘われても知らんぷり。そういう店は商売もうまくいかなかったとか。

生い立ちについては諸説あるものの、真相は謎のままだ。
本堂の階段を上がった左側に信楽焼の仙台四郎が鎮座し、古い写真も飾られている。毎朝の出勤前に手を合わせる人の姿も
副住職の加藤隆俊さん。『三瀧山不動院』では毎月28日に護摩祈祷を行っている
仙台四郎が、時代を超えて崇められる「神様」になった理由
『三瀧山不動院』の本堂前に飾られた仙台四郎の写真。隣では信楽焼の四郎がほほ笑む
四郎は、存命中から「福の神」として知られており、当時は四郎にあやかった福財布が販売されたこともあったという。

しかし、「仙台四郎」と呼ばれ民間信仰の神様になったのは彼の死後。仙台市内の写真館が以前撮影した四郎の写真と「明治福ノ神(仙臺四郎君)」の文字をハガキに印刷して売り出したのが始まりだ。
それが、今でもさまざまな店に飾られている腕組み姿の写真。30歳頃に撮影されたものとされ、当時は写真が貴重だったこともあって現在に残る四郎の写真はこの1枚のみといわれている。

さらに、今から約30年前に『三瀧山不動院』が仙台四郎を祀ったことがきっかけとなり、商売繁盛、家内安全、千客万来、心願成就の神様として多くの人に崇められている。

「笑う門には福来る。この笑顔を見ると思わず笑顔になりますよね。四郎の写真や置物をよく見えるところに飾って、笑顔でお客様をお迎えしてほしいですね」と加藤副住職。
時代を経て愛され続ける仙台四郎
数あるグッズの中でも、仙台四郎の姿がプリントされたお守りカードが人気
『三瀧山不動院』の仲見世では、写真をプリントした額縁や色紙をはじめ、財布に入れて持ち歩けるお守りカードや四郎の形をした土鈴など、さまざまな仙台四郎グッズが販売されている。額縁や色紙は開店祝いの贈り物としても定番だ。

2011年の東日本大震災の後には、地震で壊れたり津波で流されたりした四郎グッズを改めて買い求める人も多かったそう。四郎は仙台の商売人にとって欠かせない「福の神」なのだ。

さらに、『三瀧山不動院』のあるクリスロード商店街には、年末になるとサンタクロースに扮装した仙台四郎のバルーンが登場。今では毎年の恒例となっており、キャラクターとしても愛されている。

仙台の店を訪れたらまずは店内を見わたして仙台四郎を探してみるのも、仙台観光の楽しみ方になりそうだ。
子どもにも親しみやすいお手玉人形(写真上)とマスコット人形(写真下)
年末になると登場する仙台四郎のバルーン。愛嬌たっぷりのサンタクロース姿

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